音節はとても重要な単位です。ネイティヴに「音節って何?」と聞いても、明確に説明できる人はあまりいなくても、「この単語は何音節?」という質問にはほとんどの人が答えられます。そして、ネイティヴは、この音節の数が違うと結構気になるようです。会話中は意味を理解しようとしているので、「音節の数が違う!」とは思ってないかもしれませんが、ネイティヴの英語とは違うと感じる理由の1つです。
音節は音を聞いた感じで数えるため、目に見えないので説明しにくいのですが、「聞いた感じ」だからこそ、数がちがうと「なんか違う!」と感じます。
また、実際の会話では、同じ単語でも音節の数が違う場合があります。例えば、actuallyは、ゆっくりきちんと言う場合は/ˈæktʃuəli/(4音節)ですが、会話では /ˈæktʃəli/(3音節)で言う場合が多く、さらに、日常会話でサラッと言う場合は /ˈæktʃli/(2音節)のように発音される場合も多々あります。
カタカナでは「アクチャリー(4音節)」か「アクチュアリー(5音節」)なので、2音節で発音されると、かなり短く聞こえます。これが理由で、知っている単語なのに、「聞いた感じ」が違うので聞き取れない(認識できない)という事もおこります。
音節は何か?どうやって数えるか?を以下にご紹介します。
基本
発音する時に空気の通り道を舌や喉のあたりなどで邪魔しない回数が音節の数とされています。そんな事言われても、何のことかさっぱりわからないという方がほとんどだと思いますが、母音は空気の通り道を邪魔せずに発音するので、母音が1つあれば1音節と数えるというのが基本です。
ただ、母音を数える方法は、スペリングにごまかされたり、以下の注意点の部分でご紹介するsyllabic consonantsのように母音がなくても1音節と数えるものは気づきにくいので、レッスンでは「ハミング」を使って、音で音節の数を感じていただくことをおすすめしています(強制していると言ったほうが正しいかもしれません、ごめんなさい)。
この、「ハミング」を使う方法、初めはピンとこないかもしれませんが、慣れると、音節だけではなく、リズムやイントネーションの改善にも役立ちます。「ハミング」は文字では表せないので、ここでは触れませんが、レッスンを受講なさっている/なさっていた方は、ぜひ以下の注意点内の単語もハミングして音節を感じてみてください。
注意点:
1.二重母音(以下)は文字でみると母音が2つあるように見えますが、二重母音は1つの母音です。
/eɪ/, /ɔɪ/, /aɪ/, /əʊ/, /aʊ/, /ɪə/, /ʊə/, /eə/
2.母音とは音の事でスペリングではありません。
例えば、likeはスペリングでは「i」 と「e」があるので母音が2つあるように見えますが、発音記号でみると/laɪk/(子音+二重母音+子音)で、母音は1つです。スペリングのa, e, i, o, uは、母音を表すことが出来る文字(私は勝手に「母文字」と読んでいます)で、母音(音)とは別だと考えて下さい。
シンプルな1音節の単語例:
母音だけで1音節の単語
a /ə/ or /eɪ/
oh /əʊ/
ポイント:子音は空気の通り道を邪魔して発音するため、子音1つだけで1音節になることはありません。以下は全て1音節です。
子音+母音
two /tuː/
more /mɔː/
go /gəʊ/
母音+子音
off /ɒf/
out /aʊt/
ought /ɔːt/
子音+母音+子音
cup /kʌp/
peak /piːk/
boat /bəʊt/
Consonant clusters
子音が2つ以上続いた場合、consonant cluster (子音連結/子音クラスター)と呼びます。子音1つだけでは音節になりませんし、子音が2つ以上続いても普通は音節にはなりません(子音が2つ連続した場合、組み合わせによっては1音節になる場合があり、それについては後半のsyllabic consonantsのセクションでご紹介しています)。
例えば、次の単語は子音2つ+母音で1音節です:
click /klɪk/
blue /bluː/
snow /snəʊ/
1音節のパターン
次の単語は全て1音節で、5個目のcold以下は子音が2つ以上続いたconsonant clusterを含んでいます。
owe /əʊ/ 母
toe /təʊ/ 子+母
oat /əʊt/ 母+子
coat /kəʊt/ 子+母+子
cold /kəʊld/ 子+母+子子
throw /θrəʊ/ 子子+母
thrown /θrəʊn/ 子子+母+子
crones /krəʊnz/ 子子+母+子子
glimpse /glimps/ 子子母子子子
prompts /prɒmpts/ 子子+母+子子子子
spray /spreɪ/ 子子子+母
strike /straɪk/ 子子子+母+子
splashed /splæʃt/ 子子子+母+子子
strands /strændz/ 子子子+母+子子子
Syllabic consonants
通常、子音が2つ続いても音節にはなりませんが、例外はあります。子音が2つ続き、その2つ目が/n/, /m/, /l/, /r/の時、1音節なる場合があるというもので、この2つ目の子音をsyllabic consonantと呼びます。
例:
important /ɪmˈpɔːtᵊnt/ 3音節
rhythm /ˈrɪðᵊm/ 2音節
little /ˈlɪtᵊl/ 2音節
dictionary /ˈdɪkʃənᵊri/ 4音節
上記の発音記号で赤い部分の/ᵊ/は発音してもしなくてもいい/ə/です。
伝統的なBBC英語や、キングが使っている英語(少し古くさく聞こえる)では、この/ə/を発音しない場合が多く、その場合発音記号の赤い部分の最後の音がsyllabic consonantsで、赤い部分が1音節になります。
逆に、現在、/ə/を発音する傾向にあり、その場合は赤い部分に母音が1つあるので、もちろん1音節です。
なので、上記の単語は/ə/を発音してもしなくても、赤い部分は1音節になります。
音節の切れ目
音節の切れ目については詳しく書くと複雑で長くなりますので、ここでは日本人が間違いやすい事を1つお話します。
日本語の五十音は「あいうえお」以外、子音+母音(例:「か」はka)で1つの音になる場合がほとんどなので、切れ目の最後は母音だと思いがちです。
例えば、cinemaという単語は母音が3つあり3音節で、日本人の感覚からいうと「シ・ネ・マ」ですが、英語では「cin・e・ma (/ˈsɪn・ə・mə/)」です。
音節は重要ではありますが、サラッと発音すれば切れ目はほとんど聞こえないので、日常会話での発音では「切れ目」がどこかを意識する必要はないと思います。
でも、ゆっくり、しっかり発音しようと思って/ˈsɪ・nə・mə/と言った場合、通じてもネイティヴは「違う」と感じるようです。
プレゼンテーションなどで、ある1つの単語を強調するために、ゆっくりしっかり発音したい場合、前もって音節の数や切れ目を確認して練習すると自信をもって発音できると思います。ただ、これはあくまでも、強調したい1つの単語(又は短めの1つの文章)のみで使って下さい。他の部分と違いを出して目立たす(耳立たす)ためですので、使いすぎると効果がうすれます。
日本語は音節の数が多い
日本語の五十音は「ん」以外は母音で終わっているので、ローマ字では「あ」は「a」、「み」は「mi」のように最後は母音で、ほとんどの場合、一つ一つの音(五十音)が1音節です。
このため、日本語は英語に比べ音節の数が多いので、「リモート・コントロール」を「リモコン」と言うなど、長いものを3〜4音節に略して言ったりします。
日本後では、「リモート」だけで3音節ありますが、英語のremote control /rɪˈməʊt kənˈtrəʊl/は全部で4音節で、略するほど長くないので略しません。ただ、air conditionerは、「air con」というのを耳にした事があります。
また、歌は、1音節1音符の場合がほとんどなので、英語の歌をカタカナ(日本語の音節)で歌うのは無理があります。
例えば、子供向けの英語の歌に「Old McDonald had a farm」というのがあり、「Old McDonald」は全部で4音節なので音符も4つなのですが、カタカナの「オゥルドマクドナルド」は9音節ありますので、カタカナのままではうまく歌えません。
BBCのYouTubeビデオをくっつけましたので、一緒に歌ってみて下さい。
また、英語の歌を日本語に訳すと、内容がかなり薄くなってしまいます。例えば、「赤鼻のトナカイ」の始まり「まっかなおはなの」の部分は7音節です。
英語の歌詞はこの7音節で「Rudolf the red nosed reindeer」と歌えます(Rudolfとreindeerがそれぞれ2音節、the, red, nosedが全て1音節で、全部で7音節)。
同じ7音節で、日本語だと「とても赤いはな」しか表現できませんが、英語では「ルドルフという名前の赤い鼻をしたトナカイ」と伝えることができ、同じ音節の数でも情報量がかなりちがいます。
「ネイティヴは喋るのが早い」と感じる理由は、スピードが早いだけではなく、同じ時間内(同じ音節数内)での情報量が日本語より多く、内容を理解する時間が足りないので、さらに早く感じることもあると思います。
余談ですが、音節とは逆に、日本語は漢字があるので文字数は英語より少ない場合が多いです(例:「机」は「desk」、「友達」は「friend(s)」)。ということは、英語の文章を読む時、1つの単語を認識するために処理しなければいけない文字数が日本語より多いことになります。英語を読んで理解するのに時間がかかる原因の1つではないでしょうか。
速読の訓練の中には、より広い範囲を見て(視野を広げて)瞬時に理解するというものもありますが、英語を読む時には、これはかなり重要です。
日本語の「す」と「ず」
日本語の五十音は「ん」以外は母音で終わっているはずですが、実際に発音する時は母音を発音していない場合もあります。
それに気づいたのは、日本にいた頃、同僚のアメリカ人から、日本語の「です」や「ます」の「す(su)」はいつ「う(u)」を発音し、どんな時に発音しないのか?と聞かれた時でした。
それまでは、「す」はいつも最後に「う(u)」と言っていると無意識に思っていました。でも、「ありがとうございます」を自然に発音してみると、最後は「ss」という感じで「s」の音を少し長めに言っているだけと気づいたのです。
このように、「su」と発音しても「s」だけでも「su」だと思ってる場合が多く、「snow」や「station」など、/s/の次にすぐに子音がある場合、実際ない「う」が聞こえる気がします。「snow」が1音節だと言われても、しっくりこない生徒さんが多いのは、これが原因かと思われます。
「す」だけではなく「ず」も同じですので、husband /ˈhʌzbənd/は、/z/と/b/の間に/u/があるように聞こえると感じるかもしれません。
また、カタカナでは「ス」や「ズ」で表すth (/θ/, /ð/)も、/u/があるという錯覚に陥り、through /θruː/は/ˈθuruː/だと思ってしまう生徒さんが非常に多いです。
英語だとわかりにくい場合は、日本語で次の単語やフレーズを/u/がある発音とない発音で言って違いを感じてみて下さい。
息子 musuko(3音節) musko(2音節)
酢の物 sunomono(4音節) snomono(3音節)
明日から asukara(4音節) askara(3音節)
〜ですか? desuka?(3音節) deska?(2音節)
松田(さん) matsuda(3音節) matsda(2音節)
和子(さん) kazuko(3音節) kazko(2音節)
音節に関するブログ:
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