日本語と英語の発音は違いますので、カタカナ発音では駄目だという事は皆さんご承知だと思います。とは言え、日本人ですからついカタカナで考えてしまうと思いますし、発音記号を知らな場合、カタカナ(日本語)に頼ってしまうのは仕方がないことだと思います。
ただ、このカタカナが発音やリスニングの邪魔になることが多いため、今回はカタカナが駄目な理由を6つご紹介し、カタカナから発音記号に切り替える重要さをお伝えしたいと思います。
日本語にない子音(θ, ðなど)は、カタカナで表わせないものがあることをご存知だと思いますので、ここでは、結構気づいていないのでは?というカタカナの落とし穴についての6つです。
単語例のほとんどは、正しい(辞書に載っている)発音記号とカタカナの両方を書きましたので、違いを感じてみて下さい。
1. 統一性がない
英語では同じ音なのにカタカナでは違う文字になっている場合があります。
I. /ti/のカタカナは「ティ」だったり「チ」だったりする。
例:
tea /ti:/ティー
team /ti:m/チーム
tip /tɪp/チップ(レストランなどで払うチップ)
routine /ruːˈtiːn/ルーチン
理由は、た行をローマ字(ta chi tsu te to)で見るとわかりますが、五十音にはtiの音はなく、tiの位置に来るはずの音をchi「チ」(/tʃi/に近い音)で発音するため、/ti/の部分が「チ」で表記される単語が多いのだと思います。
もちろん、日本語で話す時はカタカナの「チーム」や「チップ」ですが 、英語でteamやtipを「チーム」「チップ」と発音するのは、紅茶を「チー」と発音するのと同じです。そう考えると、ちゃんと英語で発音したいですよね。
ルーチンは、ルーティンやルーティーンのように書くこともあるようですし、他の単語のカタカナも徐々に英語読みに近いものに変わっているようですが、あくまでもカタカナは日本語というのを忘れないようにして下さい。
II. 「トゥ」それとも「ツ」?
上記で、た行をローマ字で見た時、「ツ」もあやしいと気づかれた方もいるかもしれません。そうです、五十音にはtuの音もなく、代わりにtsuがあります。
このため、また英語では同じ発音なのにカタカナでは違うパターンがあります。
例:
two /tu:/ツー
to /tu:/ (strong formの場合)トゥー
また、スペリングでtの次に子音がある場合のtのカタカナも「ツ」だったり、「ト」だったりします:
例:
twin /twɪn/ツイン:/tw/の部分がツになっている
twelve /twelv/トゥエルブ:/tw/がトゥになっている
tree /tri:/ツリー:/t/がツになっている
street /stri:t/ストリート:/t/がトになっている
III. シュワ
発音レッスンを受けた経験のある方にはお馴染みのシュワ/ə/は、カタカナでは「ア」「エ」「オ」などになり、カタカナでは統一性がありません。
以下、太字の部分がシュワの発音です。
ア: about, support, Japan, banana, America
アー:forward, percent, herself, flower (アメリカ英語はシュワの後にrを発音する)
エ: document, camera, absent(カメラのシュワは発音しない場合が多い)
オ: London, condition, introduce, occur
オー: Oxford, forget, forgive(アメリカ英語はシュワの後にrを発音する)
また、シュワが入った音節のカタカナも統一性がない場合があります。
例
carrot /ˈkærət/キャロット
carat /ˈkærət/カラット(またはキャラット)
日本語では、「ロット」と「ラット」の違いがありますが、英語では上記の2つは同じ発音です。
ocean /ˈəʊʃən/ オーシャン
musician /mju:zɪʃən/ミュージシャン
station /ˈsteɪʃən/ ステーション
mention /ˈmenʃən/ メンション
manshion /ˈmænʃən/ マンション
スペリングがcの時は「シャン」tionやsionの時は「ション」なのかもしれませんが、英語では上記は全て、/ʃən/(または/ʃn/)です。
IV. rの発音
rの次に母音がある場合は、「ラリルレロ」のどれかが使われますが、rの次が子音だったりrで終わっている単語は、カタカナでは4種類の表記があります。ちなみに、イギリス英語では次に母音がないとrは発音しません。
・「ル」 bergamot /ˈbɜːɡəˌmɒt/ ベルガモット
・「ア」 door /dɔː/ ドア
・「ー」 afterwards /ˈɑːftəwədz/ アフターアワーズ
・ 無視 pork /pɔːk/ ポーク
カタカナ表記がどのように決まるのかの知識がないので、あくまでも予想ですが、上記のうち、ドアのように「ア」で表記されるものは、以前/ɔə/という二重母音があった(今でも一部の地域では存在する)から、または、アメリカ英語で聞くと/r/の部分が「ア」っぽく聞こえるからかのどちらかだと思います。
詳しくは、以前書いたブログ「カタカナ読みと違う:スペリングの ’R’ とカタカナ」でご紹介しています。
2. 音の違いが反映されていない
英語では違う音なのに、カタカナでは同じというものもあります。代表的なのが/ɔː/と/əʊ/の違いです。
bought /bɔːt/
boat /bəʊt/
caught /kɔːt/
coat /kəʊt/
law /lɔː/
low /ləʊ/
また、bowl /bəʊl/はボウルと書きますが、/əʊ/は「オー」の表記が多いので気をつけて下さい。以下の単語は全て「オー」ではなく、/əʊ/です。
go, no, oh, ok, coast, toast, most, open, over, ocean
3. 「シ」
さ行をローマ字で見ると、「し」だけ子音が違うことがわかります。
sa shi su se so
日本語の「シ」 は/ʃi/に近く、日本語ではsiの音はありません(母国語が日本語でもshi をsiに近く発音する方もいます)が、英語には/ʃi/と/si/の両方がありますので、きちんと区別して発音する必要があります。
she /ʃi:/
sea /si:/
sheet /ʃi:t/
seat /si:t/
shin /ʃɪn/
sin /sɪn/
4. 子音の次に母音がない場合
五十音やその他の日本語の音は、ほとんどの場合母音で終わっていますので、英語で子音の次に母音がない場合のカタカナ表記は気をつける必要があります。
最後が子音の場合(カッコ内はローマ字です)
cab /kæb/ キャブ(kyabu)
hot /hɒt/ ホット(hotto)
take /teɪk/ テイク(teiku)
mug /mʌg/ マグ (magu)
come /kʌm/ カム (kamu)
full /fʊl/ フル (furu)
子音が連続している部分(consonant clusters - 太字の部分)のカタカナにも要注意です。ローマ字をみると、子音と子音の間に英語にはない母音があるのがわかりやすいと思います。スイスに関しては、wの代わりにuになっています。
black /blæk/ ブラック(burakku)
drink /drɪŋk/ ドリンク(dorinku)
graph /grɑːf/ グラフ (gurafu)
floor /flɔː/ フロア (furoa)
Swiss /swɪs/ スイス (suisu)
melt /melt/ メルト (meruto)
5. 英語にはないのにカタカナにはあるエー
「エ」を長く発音する「エー」/e:/は、英語にはありません(一部の地域では存在する)。ところが、カタカナでは「エー」が多発します。二重母音の/eɪ/を「エー」と表記する場合が多いようです。
例
great /greɪt/ グレート
date /deɪt/ デート
game /geɪm/ ゲーム
cake /keɪk/ ケーキ
station /ˈsteɪʃən/ ステーション
6. 時代遅れのカタカナ
このブログの1番目のrの部分でも触れましたが、イギリス英語には以前/ɔə/という音がありました。1977年に出版された発音辞書にも載っている音だそうです。
この/ɔə/という二重母音は、イギリスで 次に母音がないrを発音しなくなった頃、/ɔ:r/の発音をしていたものに変わりに使われ始めたそうです。今でも、ロンドンのコックニーを含め、地方によれば/ɔə/が残っている地域もあります。
カタカナで「オア」と書くものは、イギリス英語では以前この/ɔə/だった場合がほとんどですので、シュワの部分を「ア」で表していることになります。
ところが、今では一部の地域をのぞき/ɔə/は無くなり、代わりに/ɔː/と発音します。なのに、カタカナはそのままになっています。アメリカ英語ではrは発音し、rの部分は「ア」にも聞こえるため、カタカナでは「ア」と表記するのかもしれませんが、どちらにしても、英語では「ア」ではありません。
例
more /mɔː/ モア
floor /flɔː/ フロア
before /bɪˈfɔː/ ビフォア
/ɔə/だけではなく、シュワで終わる二重母音は無くなりつつありますし、子音も含め、発音は常に変化しています。ということは、出身地が同じ人でも、単語によっては同じ発音をしていないということも珍しくありません。
また、OxfordやCambridgeなどのイギリスの辞書にある発音記号も、音の変化にどのあたりで対応するかは著者の考えや、新訂版の出版時期によっても変わってくるはずです。辞書に載っている発音記号を学ぶことは大切ですが、必ずしも実際の会話で全員がそう発音しているわけではないことを理解することも重要です。
イギリスで出版されている辞書でも、少し時代遅れの発音記号が載っているものもあるくらいですから、日本のカタカナが最新になるのにはもっと時間がかかるはずで、これもカタカナの弱点の一つです。
カタカナの弱点は他にもありますが、上記6点だけでも、カタカナで考えて発音やリスニングをしていると、上達しにくいということをお伝えできたのではないかと思います。
カタカナを忘れて、発音記号で考える癖をつけ、最終目標は耳で聞き分けて同じ音が出せることを目指し、練習あるのみです!
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